テレビ番組やドラマ、ラジオなどで、同じ芸能人が別々の番組に出演することを『裏被り』と言いますが、ダメな理由はなぜでしょうか?
人気のある芸能人は、いくつも番組に出演しているので別々の番組でも放送時間が一緒になってしまうことはあると思います。
しかし、テレビ業界では『裏被り』をタブーとしていて、場合によっては違約金が発生することもあるそうですが、そこまでダメな理由はなぜなのか気になりますね。
今回はドラマの裏被りが業界にとってどのようなリスクを伴い、どのように調整や対策が行われているのかについて詳しく解説します!
テレビの裏被りとは?
「裏被り(うらかぶり)」とは、主にテレビ番組やドラマなどに出演するタレントや俳優が、同じ時間帯に異なる番組に同時出演してしまう状況を指します。
日本のテレビ業界では特にドラマでこの「裏被り」を避けることが強く求められています。
例えば、ある人気俳優が同じシーズンの同時間帯に、別の局のドラマで主役や主要キャストを務めていると、視聴者がどちらを視聴するか迷うだけでなく、俳優のイメージが混在するリスクが生じます。
そのため、多くのテレビ局やタレント事務所は裏被りを防ぐため、厳密なスケジュール管理や契約を行っています。
裏被りが発生する原因には、視聴者層が似ているために競合する放送局同士が、同じ時間帯に同じジャンルの番組を放送したり、特定の俳優が同時期に複数の局からオファーを受けることが挙げられます。
しかし、視聴者層を取り合うことで視聴率が分散し、結果としてどちらのドラマも期待以上の数字を取れない可能性があります。
そのため、人気俳優がドラマに出演する際、制作側は他局と同じ時間帯での放送が避けられるよう調整されることが一般的です。
契約書にも裏被りが発生しないように記載されていることもあり、場合によっては違約金が発生してしまう可能性もあります。
テレビの裏被りがダメな理由は?
実は「裏被り」は関係者の同意があれば問題ありません。
裏被りがダメな理由はスポンサーに対する配慮が主で、タレント、視聴者、制作側のそれぞれに不利益や混乱が生まれてしまうからです。
テレビ業界においては、基本的に出演者や関係者が裏被りしないように調整が行われています。
ただし絶対ダメではありません。
実際に過去に裏被りしている芸能人が映り込まないようにカメラワークを調整したり、その場にいないかのように映像加工せずに放送された事例があります。
タレント事務所や制作サイドも、放送局間でスケジュールを確認し、裏被りを防ぐための交渉や契約を結ぶのが一般的です。
裏被りによるスポンサーや制作側のデメリット
番組は企業とスポンサー契約を結びますが、裏被りが発生すると視聴者層を取り合うことで視聴率が分散し、広告や宣伝効果が薄れてしまう可能性があります。
ドラマ制作側にとって、裏被りは視聴率に直接的な影響を与える重要な要因です。
同時間帯に人気俳優を起用した作品が重なれば、視聴者が分散してしまい、どちらのドラマの視聴率も低下する可能性が高まります。
視聴率が分散することで、スポンサー収入や広告収益にも影響が出てしまい、結果として制作資金の調達や今後の制作方針にも悪影響が及ぶことも考えられます。
また、制作側はタレント事務所との良好な関係も重要です。
俳優やタレントの所属事務所は、裏被りが彼らのキャリアに及ぼす影響を強く認識しており、出演契約を結ぶ際に裏被りを避ける取り決めを交わすことが一般的です。
制作側は、こうした事務所との契約条件や出演スケジュールを考慮し、放送時間や放送日の調整を行うことで、各局が視聴率を最大化できるよう工夫しています。
裏被りによるタレントのデメリット
俳優やタレントにとって出演作品は、個々の役柄を通して自分のブランドやキャリアの方向性を築く大切な場です。
しかし、同じ時間帯に異なるドラマに出演すると、視聴者に混乱や違和感を与えることになりかねません。
たとえば、1つのドラマで冷静な刑事役を演じているのに、別のドラマではコミカルな役を演じている場合、視聴者はその俳優の印象を混同してしまい、結果として俳優のキャリアやブランドに影響を及ぼす可能性があります。
特に主演級の俳優や人気のあるタレントにとって、作品選びやキャスティングの方向性は、長期的なイメージ作りに大きな影響を与えます。
裏被りを避けることは、彼らの出演作品が最大限の効果を発揮し、個々の役柄が視聴者にとって強く印象付けられるために欠かせない対策といえます。
また、同時間帯の出演が続くと、メディアの露出や活動範囲が広がる一方で、視聴者の新鮮味が薄れる可能性もあるため、裏被りはキャリアにとってリスクのある状況とも言えます。
裏被りによる視聴者のデメリット
視聴者にとって、同じ俳優が同時間帯に複数の作品に出演していると、どちらを見るべきか迷うことになります。
この「選択を迫られる状況」は、視聴者にとってストレスです。
推しが2つ同時に出演していると、どちらかを後で見ることになりますが、できればリアタイ放送で見たいですよね。
さらに、同一俳優が異なる役柄で出演することにより、ドラマの世界観がブレてしまい、作品全体の質が損なわれる可能性もあります。
特に、ドラマがSNSやネット配信を通じて視聴者の間で話題になることが多い現代では、視聴者が複数の番組に感情移入しやすい状況を作り出すことが重要です。
裏被りを避けることで、視聴者が安心してドラマの世界に没入でき、作品の質や魅力がより引き立てられるため、制作側は視聴体験を大切にし、裏被りが発生しないように調整を行います。
裏被りの対策や調整方法
ドラマ業界において「裏被り」を防ぐためには、放送局、制作側、そしてタレント事務所が密接に連携し、細かい調整を行う必要があります。
ここでは、具体的にどのような対策や調整が行われているかを解説します。
1. タレント事務所と放送局の事前協議
多くのタレント事務所では、人気俳優が裏被りしないよう、複数のドラマへの出演オファーがあった場合、慎重にスケジュール調整を行います。
特に主演や主要キャストのオファーが重なった場合、タレント事務所と放送局が事前に協議を行い、出演先や放送時期を分けることが一般的です。
また、出演契約の際に、裏被りを避けるための条件を含めることもあります。
これにより、タレントのブランドイメージを維持しつつ、各ドラマの効果的なプロモーションが可能になります。
例えば、主演級の俳優がシーズンごとに別の局の作品に出演することで、視聴者に新鮮さを提供し、また各局が放送スケジュールを共有して重複を避ける体制をとります。
2. 制作サイドによるスケジュール調整と代役の準備
撮影スケジュールを調整することで、俳優が別のドラマや映画にも出演できるようにするのは一般的な手段です。
例えば、放送開始が他局の同じ時間帯のドラマと重ならないように、放送日を前後にずらすことや、場合によっては放送時間帯自体を変更するケースもあります。
また、主要キャストにオファーした俳優が別番組での出演が決まっている場合、撮影が始まる前に代役を検討するケースもあります。
こうした準備をすることで、最適なキャスティングと放送タイミングが確保され、視聴率を安定させる効果が期待できます。
さらに、制作サイドでは放送開始までのプロモーション活動を含め、俳優のスケジュールを柔軟に調整します。
SNSや公式サイトでの発信を通じてファンへの告知や盛り上げを行う場合も、各局や制作会社が一体となり、事前の調整が不可欠です。
こうしたスケジュール管理により、制作進行に問題が生じないよう、慎重に進められています。
3. 各局間での連携と調整
日本のドラマ業界では、主要放送局同士が業界全体の調和を図り、人気タレントの露出が競合しないようにする協定が暗黙のうちに存在しています。
例えば、他局の主演級の俳優がすでに別ドラマに出演している場合、その時間帯に新たな人気タレントを起用することを避け、競合しないキャスティングを行います。
また、年末年始や特別シーズンなど、視聴率が高まる時期には特に協力体制が強まり、各局が放送スケジュールを工夫して調整する傾向が見られます。
さらに、各局は大きなシーズンイベントのスケジュールを共有することで、ドラマの集中するタイミングを避け、視聴者の混乱を防いでいます。
たとえば、春や秋の改編期には、出演するタレントの重複を避けつつ、新作ドラマのラインナップを見直すことが行われます。
こうした取り組みにより、人気俳優が異なる局での出演をシーズンごとに楽しむことができ、視聴者に新鮮な印象を提供しています。
4. 映画や舞台との調整
タレントがドラマだけでなく、映画や舞台にも出演している場合、裏被りを避けるためのスケジュール調整はさらに複雑になります。
映画や舞台の公開や上演のタイミングをドラマの放送と合わせて調整し、出演作品が重ならないようにするのも、業界では一般的な手法です。
このため、事務所はテレビ局や映画配給会社、劇場側と密接に連携を取り、タレントの露出が効果的になるよう配慮しています。
特に人気の高い俳優が映画や舞台に出演する場合、そのプロモーションも行われるため、テレビでの露出やイベント出演が重ならないようにすることが重要です。
こうした業界全体の調整によって、俳優が幅広い活動を行いながら、視聴者にさまざまな側面を楽しんでもらえるような環境が整えられているのです。
5. デジタル配信サービスを活用したリカバリー策
昨今、デジタル配信サービスが普及する中で、放送局側は視聴者が好きなタイミングで番組を視聴できるよう、ドラマの配信にも注力しています。
万が一、裏被りが発生した場合でも、配信サービスを利用することで視聴者は見逃し視聴が可能となり、リアルタイムでの視聴率にとらわれない視聴環境が整えられています。
これにより、裏被りのリスクを減らし、視聴者が好きなタイミングで楽しめる柔軟な視聴方法が提供されています。
ただし、配信サービスの利用が一般化しているとはいえ、テレビ局にとってリアルタイム視聴率は依然として重要な指標です。
そのため、リアルタイム視聴ができる環境を整えたうえで、配信サービスを補完的に利用する形でのリカバリー策が採られています。
まとめ
ドラマ業界において「裏被り」がNGとされるのは、タレントのブランドイメージの保護、視聴者の視聴体験の向上、そして制作サイドの視聴率の確保といった要素が大きく関わっています。
タレント事務所と放送局は、人気俳優の出演が競合しないように事前協議を行い、放送スケジュールを調整しています。
加えて、各放送局間の連携により、同時間帯に競合しない工夫がされ、視聴者が混乱せずにドラマを楽しめる配慮がなされています。
また、映画や舞台への出演ともスケジュールを調整し、タレントが幅広い分野で活躍できる環境が整えられています。
さらに、デジタル配信サービスの活用によって、リアルタイム視聴にこだわらない視聴スタイルが広まりつつあり、万が一の裏被りにも対応できる柔軟な視聴環境が提供されています。
このような背景から、ドラマ業界における出演スケジュールの調整は、タレントや視聴者、制作サイドそれぞれにとって重要な意義を持っており、業界全体で調整が行われているのです。
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